ゼロからのスタート

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入部テストから3日が過ぎた。 “お前たちは必要ない” その言葉が何度も頭の中を駆け巡り、夜はあまり眠れない。 イライラする。 そんなイライラを和らげようと、火村はグラウンドの側の階段に座って風にあたっていた。 暖かい風が吹く。 ふと、後ろから声がした。 「よお。火村…だっけ?燃え尽きたか?」 「出たな。サウスポー」 火村は後ろに倒れ込み、声の主を見上げた。 そこには、一緒に入部テストに落ちた速水がいた。 「ちょっと、散歩しないか…?」 速水がそう言った。 「ったくよ。このスーパースラッガーが入部テストに落ちるとはな。あいつ、見る目がねぇよ」 「それを言うなら、俺もだ。この、鉄壁の守りを入れないって言うんだからな」 火村と速水は、グラウンドの隅を歩いていた。 速水も入部テストに落ちたのがショックらしく、笑っているように話していても顔は笑っていなかった。 火村にはよく分かる。 自分もそうなのだから。 しばらく沈黙が続き、学校のプールの前で速水が口を開いた。 「火村、これからどうすんだ?帰宅部か?」 「その質問、そのままお前に返す」 「ハッ…。じゃあ、提案がある」 「何?」 「珍しい部活を見つけたんだ。名前がな……」 速水が言いかけた時だった。 バシンッ!という、何とも痛そうな音がした。 見れば、ドッジボールなどに使う大きさのボールが、火村の顔にぶつかっている。 真正面だ。 速水は「おぉ…」と言いながら、火村の顔を見た。 顔にはくっきりと、ボールの痕が…。 「ってぇぇぇえぇえ!」 「お前、凄いな…。鼻血すら出ないなんて、どんな頑丈な顔だよ…」 前にも一度、経験した事のある展開である。 火村は何となく、この先の展開が読めた。 ボールを両手で拾い、凝視する。 「ドッジボールだ…。速水。この学校、ドッジボール部なんてあんの?」 速水は首を傾げ、何か思い当たるものがあるのか、「もしかして…」とつぶやいた。 速水は火村の手からボールを奪い、ボールを確認する。 「あった」 そう言って、ボールに書かれた文字を指差した。 火村は覗き込むように、その文字を確認した。 「蹴野…部?」 使い込まれているのか、かすれてよく分からない。 その時、グラウンドの方から声がした。
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