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「お~い!大丈夫か~!?」
先程の火村の予想通りである。
以前と同じ展開…。
違うのは、速水がいる事とボールの大きさ。
火村は以前と同じように、走ってきた男にボールを投げた。
「あんたら、ドッジボール部?」
火村が言う。
男は「違う違う」と笑いながら言い、自分は“蹴野球部”の部員だという事を告げた。
「蹴野球?何それ?」
火村は不思議そうな顔で、速水を見た。
速水はそれに応えるように説明する。
「キックベースボール部だよ。俺がさっき珍しい部活があるって言いかけたのが、キックベースボール部」
説明されても不思議そうな顔をしている火村を見てか、男は苦笑いをしていた。
「俺、キックベースって、小学生の時の放課に遊んだ記憶しかないんだけど…?ここまで本格的にやるもんなの?」
火村の言う通り、男は野球部のようなユニフォームを着ており、手にはサッカーのキーパーがするような手袋、足にはスパイクのような、甲の部分に金板が付いたものを履いていた。
まじまじと見る火村に照れながらも、男は口を開いた。
「まあ…珍しいよね。キックベースボール部なんて、聞いた事ないだろうし。実際、この学校に部が出来たのも去年だし…。今年で2年目だね。でも、意外に大会とかあるんだよ?」
「へぇ~。ふ~ん。ほぉ~」
それを聞き、さらにまじまじと見始めた火村。
一緒にいる速水が恥ずかしくなってきたほどだ。
「ねぇ。君達、ウチの部活に入らない?人数足りないんだ。何なら、見学だけでも…」
男がそう言うと、火村は立ち上がり、速水に「どうする?」と問い掛けた。
「じゃあ、見学してみるか?」
「あぁ。見学だけ…な?行こうか、速水くん」
「気持ち悪い。くん付けするな」
「さあ、行こうか?小さい人」
小さい人とは、蹴野球部の男である。
「あのね。僕、これでも2年生。先輩なんだけど…?」
「え…?あ。すんません!」
火村は慌てて謝る。
速水は、小さい人の名前を聞いた。
「僕?僕は如月(キサラギ)。よろしくね」
そう言って、3人はキックベースボール部の練習場所に向かった。
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