ゼロからのスタート

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そもそも、七海の風貌から性格が伺える。 髪は寝癖なのかボサボサで、背は180オーバーなのに頼りなく見え、目と口は元からの顔なのかニヤけていた。 「七海。1年生がついていけてないぞ」 土肥が七海の早口を止める。 七海はつまらなさそうに、頬をプーっと膨らませた。 しかし、土肥にも驚く。 他の2人に比べて、筋肉の付き方が違うのだ。 背は2m近くあり、筋肉は何か違うスポーツをやっているのではと思わせる。 「土肥だ。よろしくな」 土肥に手を差し出され、火村はゆっくりと手を伸ばした。 握手すると、土肥の手が大きい事がよく分かる。 「今日は、見学?」 土肥が言った。 「即入部だよね?」 如月が間髪入れずに、火村たちに迫る。 速水はそれを押し退けながらも、「見学です」と言った。 「うん。じゃ、俺たちは練習始めるから、そこのベンチにでも座って見ててよ」 土肥はそう言って歩き始めたが、火村はある事に気付く。 「さ、3人しかいなくないっすか?」 「うん。3人だよ。僕を含めて、部員は3人」 如月が答える。 「キックベースは、2人以上9人以下なら何人でも良いって事になってるんだ。だから、3人でも試合には出られるから大丈夫!君達も心配しなくても、この入部届けにサインすれば試合に出られるからね。さささ…」 如月はそこまでして新入部員が欲しいのか、不思議な事にユニフォームのポケットから入部届けの用紙が出てきた。 火村たちはそれを必至に返し、土肥に言われた通りに近くのベンチに座る。 如月は面白くなさそうな顔をしながら、土肥と七海を含んだ3人でキャッチボールを始めた。 しかし、ボールが大きい。 野球しかやってこなかった火村たちにとって、大きなボールでのキャッチボールは不思議な光景だった。
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