チームメイト

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その日の休み時間、火村は自分のクラスメイトに声をかけていた。 しかし、誰も話に乗ってくれる者はいなかった。 速水の方もダメだったらしい。 昼休みに火村が速水のクラスに行くと、溜め息混じりに報告された。 「つまりさ、速水。キックベースボール部なんて珍しい部活を選ぶ人は、数少ないわけだ」 「まあ、それは最初から分かってるけどな」 「どうする?別のクラスで勧誘するとなると、繋がりが無いから変にぎくしゃくすると思うんだけど…?」 その言葉に、速水は腕を組んで考える。 どうしたものか…。 寂しいのもあるが、試合をするにあたって敵との戦力差を縮める意味でも部員は多い方が良い。 良い案も思い浮かばず時間だけが過ぎていった。 「私が手伝ってあげよっか?」 ふと、そんな声が聞こえた。 2人が顔を上げると、そこには1人の女子生徒が…。 茶色の長めの髪を後ろで髪止めで止め、顔はしっかりと化粧している。 スカートの裾なんか、膝よりかなり上だ。 一言で言って、“いまどきのじょしこうせい”である。 「あんた誰?」 火村が何ともブサイクな顔で聞いた。 知らない人間にいきなり話に入って来られれば、この質問は当然だろう。 速水も不思議そうな顔をしていた。 そんな2人をよそに、女子生徒は火村に顔をグイッ!と近付けた。 そして、しかめっ面で火村の顔をジッ…と見つめる。 「無いな」 そう言って、女子生徒は顔を引っ込めた。 火村はますます、訳が分からない、という顔をする。 「で、お前誰だよ…。てか、何を手伝ってくれるって?」 速水が言った。 すると女子生徒は、今度は速水に顔を近付けると、 「有り!」 そう一言…。 「な、何が…?」 速水は一歩後退する。 女子生徒は一歩前進。 「ね。アド教えて?」 二言目に彼女の口から出た言葉はそれだった。 速水が、はぁ…?と戸惑っていると、女子生徒はさらに一歩前進し、 「メアド!ケータイ持ってんでしょ?」 そう言って速水のズボンの右ポケットから、白いスライド式の携帯電話を勝手に取り出した。 「おいっ!」 「気にしない、気にしない。いいじゃん、アド教えるくらい」 そう言いながら女子生徒は、赤外線機能を使ってアドレスの交換をする。
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