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「あ。ケー番まで来ちゃった。まあ、良いよね?」
女子生徒はアドレス帳に速水のアドレスを登録すると、ほいっ!と携帯電話を返した。
「お前一体何なん……」
「名前は?」
女子生徒が聞く。
「え?あ。速水……じゃなくて!」
「え?速水じゃないの?」
「いや、名前は速水だけど、そうじゃなくて!」
速水は完全に、女子生徒に振り回されていた。
横で火村が、退屈そうにあくびをしている。
「とりあえず、お前の名前は?」
速水が聞くと女子生徒は、
「御堂 奈央(ミドウ ナオ)。“奈央”で登録しといていいよ~!」
と、自分の携帯電話を見ながら答えた。
さて、ここからが本題だ。
女子生徒改め奈央は、先程“手伝う”と言った。
「で、何を手伝ってくれんの、お前は?」
火村が聞く。
「部員。探してるんでしょ?私が手伝ってあげよっか、つってんの」
「マジで?」
「マジで」
速水は隣でそれを聞いて、嬉しそうな顔になる。
と同時に、何故?という疑問に駆られた。
見ず知らずの人物に、そんな事してもらえる理由など思い当たらない。
「自己満足のため」
聞くと、彼女はそう言った。
「で。誰を紹介してくれるの?」
火村はグイッ…と奈央に近付いた。
奈央はうっとうしそうに、近付く火村の顔を手で押し退ける。
「あんたに興味は無いの。その汚い顔、どっかやって」
その言葉に、火村はよろめいた。
両膝、両手を地面に着ける。
そんな火村をよそに、速水は同じ質問をした。
「え~っとね…ほら、そこに見える2人」
彼女が指を差した先には、教室ので仲良く話している男子生徒が2人…。
廊下と教室なので、奈央から男子生徒までの距離は5mも無い。
「キンモクセ~イ!」
奈央はそう呼んだ。
男子生徒2人はそれに気付き、首だけをこちらに回した。
“キンモクセイ”
見たところ1人は長髪、1人は短髪の普通の男子高校生2人組だ。
奈央が軽く手招きすると男子生徒2人は、お前が来い、と言わんばかりに手招きで返してきた。
それに何を感じたのか、奈央は執拗に手招きを続ける。
ついに諦めたか、長髪の方が立ち上がった。
しかし、短髪が長髪の袖を掴み、阻止する。
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