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「さっさと来いよ、“キンモクセイ”!」
奈央が声を張り上げた。
すると、溜め息混じりに“キンモクセイ”とやらは立ち上がり、面倒臭そうにこちらに向かって来た。
教室を出て、奈央の前に立つ。
「遅ぇよ。呼んだら早く来いよ」
奈央は長髪の腹をグーで小突くと、火村たちの方を見て、
「こいつら」
と紹介した。
酷い紹介のしかたである。
「ども…」
火村が引きつった笑顔を見せながら、チョンッ…と頭を下げた。
「なんか用?」
「俺ら忙しいんだけど」
「そそ。世界平和について語り合っとんのさ」
「うそつけよ。お前の部活決めに付き合ってんだろ~が」
短髪、長髪の順に、テンポ良く話が進んでいく。
実に息のあった2人だ。
「部活、まだ決めてないの?」
火村が聞いた。
「そうだけど…。それが何か?」
短髪は怪訝そうな顔をして答えた。
見ず知らずの人にそんな事を聞かれれば、当然だろう。
しかし、そんな短髪をよそに、火村と速水は顔を合わせてニィッ…と笑うと、
「「キックベース、やらないか!?」」
と聞いた。
あまりに唐突な事なので、短髪の目は開いたままになっていた。
少し、答えに困っているように見える。
「キックベースだってさ」
長髪が短髪の顔を覗く。
短髪は実に嫌そうな顔をしていた。
「そんな、顔に出さなくても…」
火村がげんなりした顔をする。
「だって、キックベースだぜ?小学生の時、放課にやったくらいだぜ?」
「お前と同じ事言ってるな」
速水が火村を見る。
「まあ、誰だってそんな感じだって…」
火村も苦笑いしながら、速水を見た。
「これをきっかけに、やってみる気とか無い?」
「無い!な。金本(カネモト)?」
なるほど。
長髪は“金本”と言うようだ。
金本は短髪に聞かれ、明らかにおかしい動作をした。
目と手が泳いでいる。
「金本…。まさか…?」
「俺は、ちょっと興味あんなぁ…」
「な…!」
金本はニヘラ…と笑い、スススッ…と火村たちの方へ近付いた。
「ようこそ。金本くん!」
火村が手を出すと、金本はギュッと手を握った。
「木曽(キソ)も来なよ」
金本が短髪を呼ぶ。
どうやら、短髪の名前は木曽と言うようだ。
木曽はあからさまに戸惑っていた。
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