チームメイト

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「チャオ!……って、どした?」 そこに七海が現れた。 ガンの飛ばし合いをしている火村と奈央を見て、だんだんとオロオロし始める。 土肥は火村と奈央の間に割って入っているし、如月は相変わらず“キンモクセイ”の説得をしている。 速水はというと、ひとりで走りに行く準備をしていた。 ここには居づらいと感じたのか、七海も走りに行く準備を始めた。 「速水~。一緒に走っていいか~?」 別にそうする必要も無いのに、ヒソヒソ声で速水に話しかける。 速水は、 「いいですけど」 と一言で答えただけだった。 2人が走りに行った後も、火村たちのガンの飛ばし合いと如月の説得は続く。 「てめぇ、調子こいてんじゃねぇぞ…」 「ねぇねぇ、いいでしょ?キックベースやろうよ!」 「そっちこそ、何を偉そうに…」 「いや、俺たちは別に…。な。金本?」 「2人とも、いい加減に仲良くしてくれ」 「俺、入ろかなぁ」 「おい、金本!?」 ついには皆バラバラの事を言い、収拾がつかなくなっていた。 土肥はその雰囲気に耐えかねたのだろう。 パンッ!と両の手のひらを打つと、大きな声を出した。 「はい!おしまい!」 その場にいた全員が、一斉に土肥を見た。 土肥は火村に練習を始めるように言うと、今度は如月たちの方へ行き如月にも練習を始めさせた。 2人とも渋々ではあるが、言われた通りにする。 金本と木曽には、体験入部という形で練習を始めさせた。 残るは、奈央。 今、一番やっかいなのは彼女だ。 元々、この部ではマネージャーなんてポジションは無かった。 例えば、練習器具を運ぶのは自分たちだけでやっていたし、スケジュール管理も土肥の仕事。 マネージャーなどいなくても、それなりに自分たちだけでやってこれた。 さて、どうしたものか…。 とにかく話をしてみようと思った土肥は、何か質問を考えてみる。 「マネージャーやりたいって事は、キックベースに興味があるのかな?」 「無いです」 「…………」 土肥は言葉に詰る。 奈央は会話するのが嫌なのか、面倒臭そうな顔をして頭を掻いていた。 「で。マネージャーやっていいんですか?まあ、ダメでも勝手に見学とかしますけど」 奈央のその言葉に、土肥は小さくため息をつく。
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