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「分かった…。お願いするよ」
そして、諦めた。
必要無いと言っても周りをウロウロされるなら、何かマネージャーとして働いてもらった方が良いと考えたからだ。
奈央はそれを聞いた途端、小走りでグラウンドの端にあるベンチに向かった。
そして、そこにドカッ!と腰を降ろす。
何をするわけでもなく、ただ座っているだけだ。
土肥はもう一度ため息をつくと、自分も練習に参加した。
☆
「はぁ…はぁ……」
「七海先輩、バテてません?」
「いや、まあ…。最近、部活行ってなかったからなぁ…」
速水と七海は、野球部のグラウンドの側を走っていた。
野球部の活気ある声が聞こえてくる。
と言っても、専用の野球場の中でやっているので姿は見えないが。
「そういえば、なんで部活来なかったんですか?」
「講習。今、資格狙っててな。学校の講習受けてんの」
そんな他愛の無い話をしながら、球場の外周を走り続けていた。
すると、速水の耳に大きな怒声が聞こえてきた。
何事かと声のした雑木林を覗いてみると、柄の悪そうな生徒とどこにでもいそうな生徒の3人…。
その内の柄の悪そうな2人が、どこにでもいそうな1人の生徒を威圧するように立っていた。
しかし、どこにでもいそうな生徒は臆する事無く、向かい合って立っている。
柄の悪そうな方は、2人とも坊主に剃り込みが何本も入っていた。
目付きも悪いし、いかにも“ワル”である。
対してどこにでもいそうな生徒の方は、ほのかに茶色い短髪をワックスでツンツンにしている。
こちらも、目付きはやや悪い。
睨み付けている坊主2人を、睨み返しているからだろうか。
坊主のひとりが、茶髪の胸ぐらを掴んだ。
事情は分からないが見逃すわけにはいかないと思ったのか、気付けば速水は胸倉を掴んで拳を振りかざした坊主の腕を掴んでいた。
「おいコラ!てめぇ、何すんだ!?」
腕を掴まれた坊主は、速水の方を見てわめく。
もうひとりの坊主が、速水の胸倉を掴んだ。
しかし、速水は気にする事無く茶髪の方を向く。
「どっちが悪いの?」
速水が聞くと茶髪は坊主2人組を指差し、
「そっち」
と一言。
それを聞いた速水は自分の胸倉を掴んでいる腕を両手で掴み、そのまま見事な背負い投げを見せたのだった。
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