チームメイト

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ドスンッ!という音とともに、微かな呻き声を上げる坊主頭。 それを見て怖じ気付いたのか、先程茶髪を殴ろうとしていた方の坊主は一目散に逃げ出した。 それに続いて、投げられた方の坊主頭も咳込みながら逃げ出す。 振り返りざまに、 「てめ、覚えてろよ!」 などという、昭和の香り漂う捨て台詞を吐きながら…。 速水はふぅ…と息をつき、練習着のホコリをパンパンッ…と払った。 その様子を、茶髪が眠たそうな目で見ていた。 いや、これが普段の目なのだろう。 目付きが悪いと思われた睨み方は、半開きの目で睨んでいたからかもしれない。 「おぉ~…凄いな」 半目の茶髪が、胸の前でパチパチ…と小さく拍手をした。 「何で絡まれてたんだ?」 七海が聞く。 茶髪はゆっくり七海の方を向いた。 「なんかね、“お金くれ”って言ってきたからね、“やだ”って返したら絡まれた」 「ふ~ん……って、それ、カツアゲじゃん!」 速水が茶髪に顔を近付ける。 茶髪は速水の顔を、手で押し退けた。 「先生に言いに行こうぜ?」 「いや、いい」 七海の提案に、茶髪は首を横に振った。 「いい、って……このまま放っておいたら、あいつらまた来るぞ?」 「むぅ…。それは困るな…」 速水の脅しにも似た話に、茶髪は身を縮める。 しかし茶髪も、 「言ったら言ったで、仕返しとかあるんじゃないのか…?」 と反論した。 速水はその反論に言葉が詰まり、う~ん…と唸り始めた。 すると、茶髪が思いがけない提案をした。 「じゃあ、お前が護衛してくれよ」 「はい?」 速水は思わず疑問の声を出す。 「護衛って……あの護衛…?」 「うん」 「要人とかを護る……あれ…?」 「うん」 「俺が?お前を?」 「うん」 「お前、要人か?」 「いや」 そこで生まれる、わずかな沈黙…。
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