初めての大会

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勧誘活動から何日かが過ぎた。 キンモクセイと呼ばれている木曽と金本は、如月にどう教え込まれたのか、すっかりキックベース好きになって入部。 天野は自分から入部届けを如月に提出した事もあってか、如月にペタペタと可愛がられる毎日だ。 それでも、練習は毎日頑張っている。 入部理由はどうあれ、やり始めたら頑張るタイプらしい。 ちなみに奈央はというと、相変わらずベンチに腰掛けて速水の姿を目で追う毎日。 部内でのポジションはマネージャーのはずなのに、一向にマネージャーとしての仕事をしようとしない。 最初の内は注意していた土肥も、最近では諦めたのか注意しなくなり、奈央はやりたい放題である。 それから、奈央の視線の先にいる速水だが、左利きだという事でサードを降ろされた。 「ふざけるな!俺は小・中学とサードでやってきたんだ!」 そんな反論もあったが、速水にキャッチャー経験があると知ると全員がキャッチャーを薦めた。 キャッチャーでも左利きは不利だが、サードのポジションが重なった以上、右利きの火村と左利きの速水だったらサードには右利きを取りたい。 それに何より、速水はキャッチャーの方が向いているように感じた。 キャッチャーを練習させてみると、牽制は上手い、地肩が良いから投げる球は速い、さらにリードさせてみると如月に上手く緩急を付けさせ、打者に凡打の山を築かせた。 「すげぇな速水!この火村様も脱帽だ!」 「そりゃ、どうも」 本人は希望のポジションでないので、面白そうではなかったが…。 他のポジションはというと、火村はサード、木曽と金本は、 「キンモクセイで何か相性良さそうだし、二遊間コンビでよくね?」 そんな火村の安易な考えで、木曽がセカンド、金本はショートで落ち着いた。 さらに、天野はライト。 2年生は、如月がピッチャー、土肥がファースト、七海がレフトである。 新入部員は打ち止めらしいので、センターがいない分はライトとレフトをセンター寄りに配置する事でカバーした。 しかし、そうすると外野の守る部分が広くなる。 七海と天野には、かなりのレベルアップが要されたのだった。 そして、そんなこんなでキックベースの春の大会が近付いていた。
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