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「会ってみる?」
土肥が微妙な顔をして火村に聞いた。
火村も「はぁ…」と微妙な反応で返す。
とりあえず職員室に向かい、顧問とやらの顔を拝見しに行った。
ちなみに監督はいないらしい。
それもかなり問題があるが。
とにかく、今は顧問だ。
職員室入口から、ひょっこり顔を出して室内を見渡す。
火村の後ろについていた土肥が、「あれあれ、あの人」と職員室の奥の方の教員を指差した。
「あの人ですか?」
「そうそう。あの人が顧問だよ」
「どーーー見ても……」
死にかけのじいさんだ。
最後の部分は、心の中でつぶやいた。
しかし、どう見ても死んでいるのではないか、と思えるほどのヨボヨボっぷりである。
というより、机に突っ伏している。
それで良いのか、ヨボヨボ教員よ。
だが、これで分かった事がある。
さわっただけでも崩れてしまいそうなヨボヨボのじいさんに、練習風景を見るやら、予算の計算やら、大会のエントリーやらをやれと言う方が酷だったのだ。
入口からひょっこり見ているだけというのもなんなので、火村はヨボヨボの教員に近づく。
「あの…」
恐る恐る話しかけてみた。
教員はピクッと背中を緊張させ、そしてまた元に戻る。
「すーすー」
そんな漫画みたいな寝息を立てて、依然起きる気配はない。
「な?そういう人なんだ」
後ろについてきていた土肥が、教員の姿に呆れたように頭をポリポリ掻きながら言った。
なるほど、納得。
これでは仕事しないわけだ。
部活の事もそうだが、何か重要そうな書類も山積みになっている。
よく誰も何も言わないものだ。
あ。言わないからやらないのか。
「練習…しますか」
火村は机に突っ伏した教員へ、視線を向けたまま言った。
土肥も賛成なのか、火村の背中をかるく押しながら出入口に向かう。
顧問の教員は、まだ眠ったままだった。
☆
「ほらほら、そこ!キックする時は、もっと腰を回して!」
グラウンドに戻ってみれば、如月の声が響いていた。
なるほど。一応、キャプテンらしいところもあるようだ。
如月は人差し指をピンッと伸ばして、いろいろ指示を出している。
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