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つまり、そのせいで如月は情報を知らなかったのである。
☆
「寝ていた……と?」
土肥が脱力したように聞いた。
如月は「てへっ」などと笑って、少しでも可愛く見せて許しを得ようとしていた。
土肥はその様子にため息をつき、並ぶ部員たちに視線を向けた。
困った顔をしながらも笑う。
「まあ、試合前に分かって良かったよ。これで、明日は気が抜けない事が分かったね」
「はい!」と、元気な返事が土肥に返ってきた。
火村の声が一番大きい。
やる気満々と言ったところだろうか。
解散の声が掛かると、気合いを漲(みなぎ)らせて歩いて行った。
☆
春の朝というのは、清々しい気持ちで目覚めることができるものだ。
まあ、春と言っても5月だが。
とにかく、速水を始め、木曽、金本、天野。
さらに、如月、土肥、七海もその朝は気持ち良く目覚める事ができた。
が、火村だけは違った。
昨晩、興奮して眠れなかったのだ。
朝、ベッドの上で体を起こすと、頭がズキズキした。
明らかに寝不足だ。
どうしたものかと、とりあえず部屋を出て水を飲む事にする。
水道の蛇口をひねり、出てきた水をグラスに注いだ。
水を一口だけ口に含むと、それを飲み込んでリビングのテレビを点けた。
お天気お姉さんが、今日の天気を予報していた。
今日は晴れのようである。
ふと画面の左上を見ると、時計が表示されていた。
それを見た瞬間、火村の目は一気に覚めた。
7時50分…。
昨日、解散前に土肥が言っていた。
「8時に学校に集合だぞ」と。
もう頭の痛みはどこかへ行き、猛スピードで着替えを始めた。
ここから学校まで、どう頑張っても30分。
間に合うはずが無い。
だが、行かないわけにもいかない。
火村は家を飛び出すと、自転車を全速力で走らせた。
途中、警察官に呼び止められそうになるも、それを無視して、まったくスピードを落とさずに自転車をこぎ続けた。
8時5分。
速水からの電話。
無視した。
8時11分。
土肥からの電話。
無視した。
8時15分~20分。
如月からの、1分おきの電話。
無視した。
結果。
置いて行かれた。
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