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所変わって、バスの中。
学校所有のバスで、試合会場に向かっていた。
「まったく。試合の日に来ないなんて、火村くんってそんなに無責任だったんだ」
如月が憤慨するその横で、土肥も少なからず怒りを見せていた。
怒っているのはその2人で、あとの皆はどうでもいいという様子。
速水以外の皆は、狭い場所でババ抜きをしていた。
とても、これから試合をしにいくような雰囲気ではない。
速水だけが唯一、音楽を聞いて精神統一をしている。
そんな和やかなムード(一部除く)のバスは、試合会場へと走って行った。
☆
所戻って、学校。
校門前。
火村はバカなので、「なんだ、まだ誰も来てないじゃん。俺一番じゃん。はっはっはー」と、自転車にまたがったまま高笑いを決めていた。
携帯電話を開くと、皆からの着信履歴が表示された。
そういえば、自転車に乗っていた時に、ポケットの中の携帯電話が振動していた気がする。
8時20分の電話。
留守電が入っているのに気付いた。
《ピーッ…火村くん、もうギリギリだから行くよ?来れるんだったら、直接、球場に来てね…ピーッ》
火村の高笑いが止んだ瞬間だった。
これはもう、あれだ。諦めるしか…。
「……って、違う違う違う違う!自転車こげ、俺!」
悪魔の囁きに打ち勝った火村は、学校から試合会場を目指して走り出した。
途中、警察官に呼び止められそうになった。
「まぁた、お前かぁぁあぁあ!!」と言われたので、さっき呼び止めようとしていた警察官だろう。
止まってないから、“止められそうになった”だ。
曲がり角を右へ、警察官を振り切る。
果たして、自転車で間に合うのだろうか。
とにかく火村は、自転車をこぎ続けるのだった。
☆
自転車を適当な場所に止めると、火村は試合会場である球場に駆け込んだ。
走りながら携帯電話のディスプレイを見ると、8時52分だった。
火村は、我ながら凄い、と思っていた。
ユニホームは、既に下に着込んである。
お陰で、もこもこしていて落ち着かない。
上を脱いで、脱いだ衣類をカバンへ押し込むと、ロッカールームのドアを勢いよく開けた。
誰もいない。
急いで残った下も脱いで、カバンと一緒にロッカーに詰め込んだ。
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