負けて得るもの

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結果から言おう。 それは見事な大敗だった。 12対0。 5回コールド。 1回の裏から、如月は打たれた。 前進回転をかけて投げる球種“ドライブ”と、後進回転をかけて投げる球種“チェンジアップ”。 さらには、ピッチャーからみて左回転をかけて投げるスライダーも…。 (※野球とは違い、バウンドする過程で軌道を変化させるため、左に変化させようとすると野球とは逆の回転をかけなくてはならない) それらを使い分けた投球も、春雨打線には通用しなかった。 1回の裏に、右方向へのツーベースヒットを打たれた。 センターがいない分外野手がセンター寄りに配置されているため、一塁線近くにヒットを打たれると捕りに行くのが遅れてしまう。 どうしてもツーベースヒットになってしまうのだ。 そして、2番キッカーには左方向へのツーランホームラン。 一体どんな練習をすれば、足でホームランを打てるのだろう。 しかも、2番キッカーにホームランを打たれたのだ。 チーム全体がかなりの打撃力を持っている事が伺える。 しかし、それでも如月は気持ちを切り換えて投げた。 3番をレフトフライに打ち取り、4番にはセンターへのツーベースを打たれるも、5・6番をショートゴロ、ライトフライに打ち取ってチェンジとなった。 そんな感じの春雨の攻撃が4回まで続き、5回の裏にスリーランホームランを打たれてしまったのだ。 相手ピッチャーも凄かった。 5回までの相手のピッチャーの成績は、脱三振8、被安打2、四死球1、失点0。 火村と土肥がそれぞれシングルヒットを打ち、速水が粘ってフォアボールで出塁した以外は塁に出る事はなかった。 とにかく球が速い。 そのため、彼の投げるチェンジアップが打ちにくい。 キックベースのチェンジアップは、野球のチェンジアップとは違う。 野球のチェンジアップは最初から遅い落ちる球を投げるが、キックベースのチェンジアップは落ちる事はないが“段々と”遅くなる。 最初は速いが、段々と遅くなるのだ。 これ程打ちにくい球種は無い。 如月もチェンジアップを投げるが、春雨のピッチャーほど力を発揮しない。 それは、球のスピードと回転数の違いからくるものだ。
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