負けて得るもの

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「マネージャーって、なにすりゃいいの?」 「何をいきなり…」 キャッチボールが、再び止まる。 2人が奈央を見た。 「ほら、私マネージャーの仕事まったくしてないじゃん?」 自分で気付いていたらしい。 そんな事を言うなら、最初から仕事してくれればいいのに、と火村は思った。 「いやさ、マネージャーの仕事をやってみれば、案外自分が好きな事かもしれないじゃん?」 「何か真剣にやってみたい、と?」 「そういうこと」 奈央は「ヘイッ!」と、ボールを投げるよう促した。 「土肥先輩に聞いてみれば?多分、泣いて喜ぶよ」 火村はそう言って、奈央にボールを投げ付けた。 奈央はボールを逸らす事なく、しっかりと受け止める。 それに少し驚いた。 「うん。そうする」 奈央から速水へ、ボールが移動する。 なかなか速い送球だった。 「問題は俺らだ」 速水がそう言った。 火村は何の事かと、不思議そうな顔をした。 「次は夏の大会。ウチの奴等、今日負けて沈んでたからな。明日、練習来ないかもよ?」 「まっさかぁ?」 とは言ったものの、やはりどこかで、そうかもしれない、と思った。 とにかく、明日にならなければ分からない。 2人はその日は入念にダウンをして、家に帰った。        ☆ キーン…コーン…カーン…コーン……。 終業を告げるチャイムが鳴る。 火村は行きたくないな、と思いながらもグラウンドに向かった。 負け試合の次の日は、練習に行きたくない事もある。 昨日、残って練習していた割には、今日は練習に向かう足がゆっくりだった。 どうもまだ、踏ん切りがついていないらしい。 「どうせ皆来てないって。そーそー、来てないー」 一人ニ役の独り言を言って、足が自転車置き場の方を向く。 が、やはり少し考えてグラウンドに向かった。 ここで帰ったりしないのは、火村の良い所だろう。 途中、速水に合った。 速水は負けは引きずっていなかった。 ケロッとした感じで、いつものようにそこに立っていた。 「皆、いるかな?」 火村が自信の無さそうに聞く。 「さあ~?行ってみないと分からないよなあ~」
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