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「6月に特別に休みをもらって、合宿を行います!場所を変えてね、学校所有の合宿場所でやるよ!」
そこまで聞いて、速水がひとつの疑問を投げ掛けた。
「ちょ、ちょっ、授業はどうなる!?」
「え?」
如月はクルリと後ろを向いた。
土肥は目を逸らして頭をポリポリ掻いている。
後ろを向いた如月が、ニヤリと笑った。
上を見て、ゆっくりと言う。
「夏休みの宿題ってさ、最初遊びまくって溜めておくと、夏休みの終わりが近付いた時が辛いよね」
何が言いたいのだろう?
皆が不安そうな顔をした。
土肥の顔には、汗が滲み出ている。
それが皆の不安をさらに駆り立てた。
「好きな事やってるとさ、溜めておいた宿題ってのは、まとめてやらなきゃいけなくなるわけだよ」
皆の顔が、まさか…、といった顔になった。
如月は、さぼった分のツケは後から払う、と言いたいらしい。
要は、合宿で潰れた授業はどこかで受けなければならない、という事が言いたいのだろう。
もちろん、これには皆も大ブーイング。
決行されるか不安なところだったが、如月の強引さで6月に合宿が決まった。
「何か質問ある?」
如月が笑顔で聞いた。
火村がすかさず手を挙げた。
「何で如月先輩は、そんなに勢いだけで決めちゃうんですか?」
「質問は無いみたいだね」
如月は見事に無視。
火村はちょっと涙が出てきた。
結局、6月に合宿をする事を全員同意し、その日は解散になった。
☆
5月31日。
合宿前日。
火村家。
「あ。ゲームって、持って行って大丈夫なのか?」
合宿の準備をしていた火村はふと思った。
1ヶ月も合宿するのだ、別に良いだろう。
そう思い、スポーツバッグの中にゲーム機を押し込んだ。
携帯電話の充電器に、洗面用具。
そうそう、ドライヤーも入れなくてはならない。
次々にバッグに押し込み、ついには肝心のキックベース道具が入らなくなってしまった。
押し入れから2つ目のバッグを取り出して、それに押し込む。
「あ。漫画って、持って行って大丈夫なのか?」
まあ、ゲーム入れちゃったし、大丈夫だろう。
そう考えて、狭いスペースに漫画を数冊押し込んだ。
一体何をしに行く気なのか、火村はそんな調子で荷造りしていた。
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