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そこからの記憶はあまりない。
気がつくと、あたしは裸で薄汚い天井を見上げていて、隣にはチャラ男がイビキをかいて寝ていた。
チャラ男の汗ばむ肌や、自分があげる、かすかな声が頭にこびりついていた。
あたしはベッドから抜け出すと、ノロノロと服を着て、部屋を出た。
夜中の、チンと冷たい空気が心にまで染みわたる。
タクシーを捕まえると、家へ向かった。
結局、帰る場所はアソコしかない。
時速60キロで流れるハデな街並みを窓越しに見つめていると、ユウナの顔が浮かんできた。
ユウナはやっぱり大人だ。
あたしがこうなる事をわかってたんだ。
危なっかしいって、そういう意味だったんだね…
ユウナ…あたし、バカやっちゃったよ
ケンケンじゃないのに…
わかってたのに…
ポロポロと涙がこぼれてきて、あたしは声を出さずに泣いた。
泣きながらケータイを取り出すと、ケンケンの登録を削除した。
タクシーの運ちゃんは、そんなあたしをバックミラー越しにチラチラ見ていた。
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