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今までの常識ではサンタクロースは男とされてきた。
白ヒゲまみれの気の優しそうなオッサンだと。一年間を良い子に過ごしたガキ達に夢と希望を与え物欲まで満たしてくれる叔父様。
それがサンタクロース。
しかし俺は知っている。
空想と真実はいつも何処かしら食い違っている。
だいたいの場合、空想のほうが美しく真実のほうが醜いことが多いのだ。
でも俺が今からするのはその逆の話。
そうサンタクロースは女の子だった。
信じられないほどかわいらしい女の子だ。
さながら雪の妖精のように白い肌は透き通って発光しているようで、小柄な体躯に流れるような動作。それは優雅でどこか気品もあった。踊る銀髪も、揺れる碧眼も、全て人間離れして、次元の違う神聖な生き物に思えた。
そんな言い回しでしか喩えられないが、とにかく俺の好みなのだ。
現実は厳しいとかいう奴がいるけど、なかなかいいじゃないか現実。
俺は好きだぜ、現実。
そこで俺は彼女に告白しようと思う。好きだという気持ちを伝えようと思ったのである。
しかし彼女とは話したことすらない。
つまり一方的、この恋が実る確率は極めて低い。
前言撤回、やっぱ現実は厳しいよ。
だが言おう。俺は――欲深い、その厳しい現実という名の荒波を越えてでも彼女を手に入れたかった。
助け船は来ない、頼れるのは自分だけ。他人に話したって信じちゃくれない。
当然だ
『サンタって本当はカワイイ女の子なんだぜ』って話を振っても、ただの痛い電波野郎にしか見えない。
だから俺は、一人で、自分だけの力で彼女を捕まえ、告白するんだ。
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