1.冬の始まりに

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博之は スナック「マサ」でのアルバイトの経験がある。 開店当初のメンバーを一代目とすると、ちょうど三代目のメンバーにあたる。 「ヤスさんはジャニ系のいい男でな、背が低いのが悩みやったなぁ~」 博之が懐かしそうにはなす。 「カウンターの床に台を置いてその上に乗って身長ごまかしてたんやで。」 「そうなんだ。いまはヤスさんは何をしてらっしゃるんですか?」 悟がヤスに興味を持って聞いてきた。 博之は少し黙ったままでグラスをあけ、話だした。 「おしいやつをなくしたよ。癌だったらしい。」 悟、満は驚きの表情になった。 悟郎は知っているのか、黙って酒を飲んでいる。 「癌って…」 「胃癌だったみたいやわ。酒ばかり飲んでたのにや、肝臓癌かと思ったけど…。結局は発見が遅れたせいで身体じゅうに転移しとったみたいやわ」 博之は淋しそうに話した。
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