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蔵のドアを開けるとひんやりとした空気が流れてきた。 ひょこっと私の横から昂くんが中を覗きこんだ。 「うわぁ、すごいねぇ。まっくらだぁ!」 好奇心でキラキラ光る瞳を向けてくる昂くんの頭をなでて一歩入った。 中は埃っぽくて子供の頃遊んでいた時と変わらない気がする。 「ひろいねぇー」 おっかなびっくりという腰つきで中に入っていく昂くんを慌てて追いかけた。 「ちょっと、昂くんってば!走ったら危ないよ」 蔵の中には絶対使うことがない馬の鞍とか樽とか、小さい頃に使ったことがある杵と臼とかが埃かぶって放置されている。 「おねえちゃん、これなに?」 鍬みたいなのを見つけて興味深そうに錆びれた刃をつっついている。 「それはね、お野菜育てる時に使うんだよ」 「ふぅん」 大袈裟に頷いている昂くんは最近なぜか「ふぅん」がお気に入りみたいだ。 テレビで覚えるらしいけど、一体誰がやってたんだか。 「おねえちゃん、これはなぁに?」 珍しい物が多いんだろう。 私もよくわからない物を聞かれ適当に答えていった。 「これはなあに?」
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