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話ながら歩く私にはソウジの表情は見えない。
でも声には残念そうな感じがなかったのを少し寂しく感じた。
「あなたはずっとこっちにいるの?」
ピタッと足音が止まる。
慌て振り向いた私にソウジは本当にわずかに微笑みを浮かべる。
「わかりません。もう来れないかもしれませんし…」
「そうなの??」
「はい。私にもよくわからないので…」
またソウジが歩きだした。
わからない…かあ。
「たぶんもう会うことないんだろうね…」
「そうかもしれませんねぇ…」
だよね。
当たり前かあ…。
落ち込んだ気分のまま、歩いていくとすぐおばあちゃんちに着いた。
「それでは…」
深々とお辞儀をされ、私もついつられて軽くお辞儀をする。
「…送ってくれてありがとう。じゃあ……」
ジィーッとソウジの瞳を見つめながら言った。
「…さようなら」
「さようなら」
にっこりと笑ったソウジに背を向けて私はおばあちゃんちに入って行く。
振り返ると、やっぱりもうソウジはいなかった。
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