11人が本棚に入れています
本棚に追加
「だから、もう隠さなくてもいいんだよ」
俺が説明し終わってそう言ったとき、明美は椅子から落ちそうになるほど笑っていた。
「どうしたの?」
「ああ、ごめん。ただ、そこまで勘違いしてたなんて可笑しくて」
今度は笑いすぎて出た涙を拭っていた。
勘違い?
どういうことだ?
俺が混乱していると、明美は喋り始めた。
「病院はおばさんのお見舞いに行ったのよ。確かに重い病気だったみたいだけど、早期発見できたからもう大丈夫みたい」
「じゃぁ、あの男の人は?」
「あれはおばさんの息子。私の従兄弟なの。一人っ子だった私をまるで実のお兄ちゃんみたいに可愛がってくれてるの」
「じゃぁ明美は病気でもないし、あの人と付き合ってもいないの?」
明美は笑いながら頷いていた。
なんてこった、全部俺の思い込みだったって言うのか?
だけど、じゃぁ何で健太はあのとき泣いたりなんて・・・、
そのとき気づいてしまった。
健太もまた、笑いを堪えていたんだってことに。
俺は何だか馬鹿らしくなってため息をついた。
「何だよ。全部勘違いか。じゃぁ、アメリカに行くって事も?」
俺が聞くと、急に明美は真剣な顔になって。
そして、静かに言った。
「それは本当よ」
そうかやっぱり、そんなに全部が上手くいくわけじゃないんだな。
だけど、よかった。
もし今日ここで演奏をしなかったら、きっと俺は一生後悔していたと思う。
そのときふと義明さんに言われた噂の真相を思い出していた…。
最初のコメントを投稿しよう!