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その手紙が来たのは、3月が間近に迫ったある日だった。
明美からの手紙だった。
俺は自分の部屋で、その手紙を読んでみることにした。
「武、元気ですか?私は、元気に毎日を楽しんでいます。それはさておき、父さんの仕事の都合で急遽アメリカに行くことになり、卒業は出来ないものだと諦めていました。ですが嬉しいことに卒業することが出来ることになりました。私たちが通っていた学校には、アメリカに姉妹校があります。前に留学生が日本に来たことを覚えていますか?それは学習の一環として学校から認められているために、1ヶ月ほど母校にいなくても卒業できるのですが。今回は特別に私もその制度に当てはめてくれるということになりました。1ヶ月以上時間があったり、突然だったんですが、私の学校での態度がよかったため?今回は認めてもらえることになりました。それでつきましては、卒業式前に日本に帰ることになりました。細かい日程などは決まっていませんので、帰り次第お土産を持って武の家を訪ねたいと思っています。
追伸。手紙を出すのが遅くなったため、私の方が先に着いてしまったらごめんなさい」
手紙を読み終えた俺は、すぐに立ち上がって部屋の片づけを始めた。
何だよ、もっと早く言ってくれてもいいのに。
そのとき、玄関のチャイムの音が聞こえてきた。
まさかこんなにタイミングよく帰っては来ないよな。
そのとき、
「武、明美ちゃんよ。早く降りてきなさい」
母さんの声が聞こえた。
「わかった」
俺は一度汚い部屋を見渡して、ため息をついた。
もう観念するしかないみたいだな。
俺はドアを開けて階段を降りた。
なんて言おうかな。
そういえば挨拶にキスをしたりするんだろうか?
そんなことを考えていると、白いワンピースに身を包んだ明美の姿が見えた。
俺は笑顔で言った。
「おかえり」
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