噂の教会

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「ここか・・・」 俺は青い屋根の教会の前に立っていた。 大きな四角の建物の横に通路が続いていて、少し細長い形をした建物に続いていた。 その細長いほうには三角の青い屋根がついていた。 そしてその屋根の下の部屋には鐘がついているのが見えた。 馬鹿にしておきながら俺は健太の進言どおり、町外れの協会に来ていた。 その理由は2つある。 一つは健太に聞く前に俺もその噂を聞いたことがあったからだ。 内容自体はとても信じられないけど、少し気になっていた。 だけど、本当はもう一つの理由のほうが大きかった。 それは、今俺はすごく焦っているってことだ。 もうクリスマスまでは1ヶ月ほどしかない。 高校の3年になってみんな進路だって決まっている、そんなときにあいつがいきなり言い出すもんだから。 そう明美がこんなときに突然言い出すから悪いんだ。 そのときため息が出た。 本当はわかっているからだ。 今までいくらでも時間はあった。 俺はいつでもプレゼントをあげることも、告白をすることも出来たんだ。 それを先延ばしにしてきたのは他ならない俺自身なんだ。 そのときどこからかカラスの鳴き声が聞こえた。 ふと我に変えって俺は中への扉を開いてみることにした。 もう夕暮れになっていた。 こんなところで考え事をしている場合じゃない。 俺には時間がないんだ。 木の大きな扉を開くと中には真ん中の赤いカーペットを挟んで、たくさんの木の長椅子が置かれていた。 その先に一段高くなったところに台が置かれていて、その横にオルガンのようなものが置かれていた。 奥の壁には大きな色のガラスがついていた。 カラフルな彩りで、微かに夕日が差し込み綺麗だった。 って、そんなことより肝心のピアノがないじゃないか。 何だよその時点で嘘だったのかよ。 何だか俺は馬鹿らしくなって、気づかれないうちに帰ろうとした。 だけど、 「おや?どちら様かな?」 と誰かに話かけられた。 見てみると紺色の神父服を着たおじいさんが立っていた。 「あっ、いえその・・・」 俺は噂話しをするのが恥ずかしくなっていた。
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