752人が本棚に入れています
本棚に追加
芳人のことばをしっかりと、噛み砕いて飲み込んだ。
「あいつはなんでか可愛げねぇけど、たまに可愛いこと言うんだ。人一倍愛想ねぇ気もするだろが、俺にとっちゃ自慢の娘だ」
芳人の言うことに、最初は戸惑いながらもひとみのことだと理解する。
「ひとみちゃんは可愛いですよ。つれないですが…」
くすん、と泣き真似をするとははっと笑いが返ってきた。
「あいつの友達の瑠璃ちゃんはほんとにいいこだ。ずっと側にいてやってほしいと思うしな」
「あぁ…でもなんか…怖くないですか?」
そうかぁ?と芳人は湊谷を見た。
どこがと、具体的な表現できない湊谷は力無い笑いをする。
「まぁ、どっちも俺にとっちゃ大事だ。何捨てても守る気はある。だけど、俺の手や目がいっつも届くってわけじゃない。だから、もしなんかあった時あんたが近くにいたら…」
ふぅ、と一つ息を吐いて湊谷の目を見た。
暗い中で、二人は互いの目を見合う。
「あいつらを、守ってやってな」
そのことばにただ、頷くことしかできなかった。
芳人はそれに安心したように礼を言い、また反対を向いて寝息を立て始めた。
湊谷も反対を向いた。
目を閉じて馳せる。
最初のコメントを投稿しよう!