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赤き花の香
『私はアニエッタ。
冬のオレンジのようにありふれた女。
この町に部屋を借りてもう4年、今日も昨日も同じような一日。
閉じ込められてドアをたたく恐怖小説の主人公のように、私の胸を打ち続けるもう一人の私がいる』
窓の外の子供の声を背に、女はシャツを着替えた。
カーテンは夕日に赤く染まり、時折思い出した様に吹く風が、女の肩をなでた。
…
…
…
「どうだいシモーヌ、ここからの展開には自信があるんだ。
なんて言うかなぁ、ほら、創作意欲って言うのかなぁ、
書きだすとペンが止まらないんだ……」
「アニエッタのモデルは誰?
私の知らない女性がモデルなのかしら?」
「おおお、シモ~~~ヌ、アニエッタのモデルは僕の理想の君で、僕の頭の中には君しかいないんだ~。
君が自分のことを教えてくれないから、色々と想像をふくらませてしまうんだ~。
だから、シモーヌ……」
「やめて、パブロ!私急いでいるの。
あなたも忙しいじゃなくて?」
「おおお、シモ~~ヌ、君の言う通りさ……
だけど、その…… なんて言うかなぁ、
もし僕のこの作品が出版されたら……」
「言わないで、パブロ、わかってるわ。
だけどもう少し考えさせて。
私、今日はもう行かなくちゃいけないの。」
「おお、シモ~~ヌウバテュ~
ジュテ~~~~~~~~~~ム
ケスケンヴァフェールドゥマ~~ン」
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