仮想の楽園

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穏やかな音楽が流れている、 晴れ空の草原を模したフィールド。そこに一人のPC(プレイヤーキャラクター)が倒れていた。剣士風の格好をした少年キャラ。 …ていうか、俺。 宝箱の周りをぐるぐる徘徊するモンスターの一群を見つけ、早速バトルを仕掛けたところ、 ゴブリン系モンスターに一発KOされた…。 しかも、ダメージ9999… あ、ありえねぇ… あまりの出来事に呆然とする俺の周りをモンスターが何事もなかったようにまた徘徊を始めている。 …何このゲーム… 出鼻をくじかれ、すっかりやる気を無くした俺は、なんかもうどうしたもんかとしばらく考えこんでいた。 と、そこへ。 「おっ!獲物一号発見!行くぞ鉄夫!!」 「ほいほいさ~♪」 意気揚々とした声が聞こえたと思った直後、穏やかだったBGMが突如激しいバトルBGMへと切り替わった! どんっ! 俺の目の前で凄い速さで緑色のPCがすっ飛んで行った。 そして緑色のPCは必殺技的な何かを叫びながら 大鎌をふるい、複数のモンスターを一気に薙ぎ倒す! 「す、すげー…!」 俺は思わず声を上げていた。 緑色のPCは、若葉色の地肌に白いタテガミとふさふさの尻尾を生やオオカミにも見える顔つきの筋骨たくましい獣人キャラだった。 その獣人キャラが大鎌をふるう度にモンスターがのけぞり、吹き飛び、ついには力尽きて消滅する。 あっという間にモンスターは全滅し、フィールドに再び穏やかな音楽が流れ始めた。 「お疲れ~シューリン♪さすがだね~僕の出番無かったよ~」 少し離れて様子を見ていたPCが獣人に駆け寄ってゆく。 こちらは人間型で、藍色の帽子と服の何だか地味な男キャラ。手に杖を持っている。 「鉄夫、やっぱりこのエリアじゃ敵弱すぎだ。全然経験値たまらないし、つまらないぞ」 「あはは~そうだね~。でもまぁ、今回はレベル上げぢゃなくて、アイテム探しに来たんだから、我慢、我慢。敵弱い方が僕も楽できるしぃ♪」 「…ぬぅぅ、仕方ないかぁ…」 獣人は不満げな声をもらしつつ歩み出した。 そして、倒れている俺の頭を踏みつけた。
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