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クリスマスが目前に迫っていたある日。
彼は窓から、白一色の外を眺めていた。
降りしきる雪以外何も見えない。
その真っ白な髭に埋もれた丸い顔には、もう何年もそこから動いてないのではないかと思うくらい、深いシワが眉間に刻まれている。
垂れ気味の目を細め、深いため息を吐く。
疲れと諦めが入り交じっている、聞いているものまで気が滅入ってしまいそうなため息だ。
「やはり、今年もやってくるのだな……」
彼はぽつりとそう呟くと、もう一度ため息を吐く。
そしてゆっくりと窓際を離れると、木でできた床を鳴らしながら、反対側にある外へと続くドアへ向かう。
横幅のある体を左右に揺らしながら、ゆっくり歩く。
そんなに広くはない部屋に、いろいろな物が置かれている。
テーブルクロスの掛けられた机と丸太をくり抜いて作ったような椅子が二組。
その下には毛の長い絨毯が敷かれている。
部屋の隅には、彼の体がぎりぎり入るくらいの大きさのベットが置かれ、その隣には小さなランプの乗ったサイドテーブルがある。
壁にはシーツを折り曲げて作ったのかと思えるくらい大きな袋と、赤い生地に白いファーの縁取りが施された服が掛けられている。
部屋の中を明るく照らしているのは、壁に取り付けられた暖炉だ。
橙色の柔らかな光が揺れている。
暖炉の前には、炎の光りを緩やかに反射している黒のブーツ。
彼はテーブルと暖炉の間を通りすぎると、金色のドアノブを捻り、ドアを開けた。
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