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それと同時に小さな人影が部屋の中に飛び込んで来た。
「サンディクロース、お届け物だよ!」
飛び込んで来たのは、雪に負けないくらい真っ白なコートを着た子供だった。
色素の薄い髪に青い目。
男とも女とも言えない、中性的な顔をしている。
その子供は背中に背負っていた籠を床に下ろす。
「これで今年の分は終わりだよ、サンディクロース」
そう言いながら、自分のよりずいぶん高い位置にある彼の顔を見上げる。
「……サンディじゃない。サンタだ」
彼、サンタクロースはそう訂正した。
それから、籠の中身を覗く。
籠の中には、色々な色をしているようにも無色透明なようにも見える、大小様々な大きさをした結晶が半分位まで入っている。
「カノー、これで全部か?」
その問いに、カノーと呼ばれた子供は困ったような顔をして頷いた。
「うん。カケラも集めたけど、それしか持って来れなかった」
サンタはそうかとだけ返すと、籠を持ち上げる。
中の結晶同士がぶつかり合って、硝子のような音を出す。
その音を聞いて、サンタの眉間のシワが心なしか薄くなったように感じられた。
籠の中に手を入れ、人差し指くらいの大きさの結晶をシワだらけの手で摘む。
サンタの無骨な指の間で、結晶は神秘的な輝きを放っている。
しばらくそれを眺めた後、また眉間のしわを深くしてカノーに声をかける。
「茶くらいだそう」
カノーは満面の笑みを浮かべながら頷くと、テーブルの方へ駆け寄っていく。
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