おやすみ

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  正確にいえば、私は向きを変えて仰向けになった。 背を向けたわけではないので、貴方が寝返りをうってこっちを向いたのも、もちろん分かった。 “…しまった” さっきまで遠かったはずの貴方との距離が一気に近付き、やたらと胸がドキドキして、眠れそうにない。 ベッドを軋ませると、おそらく貴方に怒られるので、頭だけをそっと貴方の方に向けた。 ……が、それに気付いたのか、貴方はまたすぐに、私に背を向けるように寝返りをうってしまった。 こんなに近くにいるのに… 手を伸ばせば届く距離なのに… だけど遥かに遠い、貴方との心の距離…。 “もう、昔のことなんて覚えてないのかな…?” 貴方の後頭部を見つめながら、一人で過去の想い出に浸る。 「おいで?」 ニッコリと、たまに意地悪そうな笑顔で、私を呼ぶ貴方。 私は照れながらも、貴方の腕の中へ転がり込む。 “あったかい…//” その頃の私は、貴方の腕の中で貴方の体温を感じている時が、本当に幸せだった。  
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