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電車が来るまで、後5分程しかない。切符も買わなければいけないので、貴方の方を何度も振り返りながら、駅の方へと足を進める。
そんな私の様子を見て、貴方もハンドルを切り返し、家の方向へと車の向きを変えた。
私が足を止めると、貴方の車がピタッと止まり、ゆっくりと窓ガラスが開いた。
「……じゃあなっ!!」
貴方の声に、周りに居た何人かが振り返った。
「ばいばい…っ!」
貴方に聞こえたかどうかは分からない。でも、私が大きく手を振ったのを確認して、窓ガラスがゆっくりと閉まった。
パパッと短いクラクションを二回鳴らして、貴方の車はゆっくりと動き出し、来た道の方へと小さくなっていった。
「……ふぅ」
私は小さく息をついて、急いで切符を買い、早足でホームへと向かった。
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