別の蜘蛛の巣

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「絢~今度ariaでフリーパスのイベントがあるから行こうよー」 休み時間の教室の中、ふとクラスメイトの声が響いた。 「aria?!そうなんだ~」 ariaの内装や雰囲気大好き~と嬉しそうに答える絢を鷹はちらと視線を向け、すぐに友人へと戻した。 クラスに響いた声だったのでその内容に口を開いたのは嵩であった。 「ariaねぇ~女が好きそうなとこではあるよな」 件のariaはクラブの店名であった。 普段はチケット制でそのチケットも高校生には少々入手しにくいという、ちょっとしたステイタスのあるところで、内装を有名な建築家が設計したそうで女性に人気の店だ。 鷹はariaのあの軽くない空気や目にうるさくない照明、かといって客を選ぶようなお高いスタイルではないあの店が結構気に入っていて、一人でも何度か足を運んでいた。 「鷹はよく行ってるよな、あっこ好きだろう」 好みを理解している友人はariaには興味がなく、数回付き合いで入った事がある程度で、進んで行こうとは言わない。 「まぁな、スタッフの感じも結構いいんだ。 うるさいのもいないし?」 何を「うるさいもの」と言っているのかはありありと分かり、あの店の雰囲気を思い出した鷹は口角を少しだけ上げた。 「世の中、うるさくされたい男は少なくないはずだがな? 今までほんと、刺されず生きてるのが不思議だな」 呆れた口調の嵩は刺されず生きてこれた恩人になるのだろうか、助かっているとぼそりと鷹は呟く。 「わかってんよ、お前の性格は」 ぽつりと提が怒るでも、嗜めるでもなく言う。 鷹の歪みはこの親しい友人達には知れている。 この少し許された空気が鷹は心地よかった。
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