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机の上に投げ出した足をイライラと鷹は揺らし始める。
「オーナーもマスターもその手の事には関与しねぇんだ、誰が動いてる?」
絢が行こうとしている事を知らなければ本来は聞かなかった事にしたい話になってきている事は鷹も嵩も十分分かっている。
そもそも、この情報を集めた時点で嵩を巻き込む形になっている。
「直接的な動きは<夜宴>の下っ端っぽいんだが、そのバックには森尾組のヤツらしい。」
足の揺れを止めた鷹は溜息をつくしかなかった。
「夜宴ってお前…ここらで一番でかい族の下っ端がなんで組の揉め事に噛んでんだよ…」
ますます面倒な事になっているが、嵩の説明はまだ終わらない。
「イベントの当日は薬使って適当な女を個室に連れ込んで乱交。
で、女は風俗に落として森尾の商品になるか、どっかに売られるんだと。」
「ベタ過ぎて笑えねぇな。そんで商品価値のない女と男を薬握らせて店に残しておまわりさんに来てもらいましょうってか?」
鷹の口から出た笑みには揶揄が混ざっており、嵩も片眉をひょいと上げただけであった。
「じゃ、工藤さんとマスターはどうなってんだ?マスターがいたらそこまでさせねぇだろ。」
「それがな、先月から工藤さんは、『なぜか』香港出張。帰りはariaのイベント日の翌々日。
工藤さんに近い手下は一緒に行ってて、手薄な今がチャンスとばかりに~って感じ?
マスターは先週から族の闇討ちにあって面会謝絶。
あえて薬まで使うって事は工藤さんがなんらかの思惑に邪魔なのか、鴛龍会から破門されるのが目的か…だな。」
「マスターが闇討ちにあったって事で工藤さんの帰国が早まる可能性は?」
「ない。香港の会合があるのはイベント当日の夜だから工藤さんはそれが終わらないと帰国できないらしい。」
「でも、手下は戻すんじゃね?」
自分が工藤の立場であれば調べさせようと手下を使う、お気楽な人間ではないならまずそうするであろう。
「そのあたりは既に手を打ってるとは思うんだがなぁ、何しろ、会合内容がデリケートらしくて工藤さんも動きにくいみたいだな。」
再び鷹は足を揺らし始めた。
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