別の蜘蛛の巣

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友人3人は鷹の周りに立ちはだかる。 その様子は呆れとも落胆とも受け取れた。 「あー…と、まず、確認してぇんだけど」 飴を食べ終え、残った棒をダストボックスに投げ込もうと狙いをつけながら純が口を開く。 「お前さ、一人で行く気なわけ?」 カラン、とダストボックスで棒の落ちる音がした後、普段より低く、喉からではなく、腹から出ているような声で問われる。 「ここまで面倒な事になってて、巻き込んで面倒が起きたら悪いからな。 俺の目的は初めから一つだし、そのつもりだ。」 先ほどまでの軽い口調はお互いにない。 「じゃあ、なんで俺らに聞かせたんだよ。」 普段ニコニコと笑みを絶やさない人間が据えた視線を向けると迫力のあるものになる。 教室の中の空気を変えそうなやりとりに水を差したのは提であった。 「鷹、それって水臭ぇって言わね?」 純の気を逸らせるように鷹と純の間にその大きな体を割り込ませ、鷹の肩をわざとらしく叩いた。 鷹の身長も高いが、提はその身長もさることながら骨格からして大きい。 身長は鷹を少し見下ろす程で真面目な視線で見下ろされると迫力負けしてしまいそうになる。 この提が立っているだけで、喧嘩まで発展しなかった事もあったほどであった。 「悪いとは思う、けどな…今回はマジでやべぇから」 提から視線を外してバツが悪そうに鷹が足を組みかえる。 「まぁまぁ。3人ともお茶でも飲みながらちょっとゆっくり話そうぜ? とりあえず…」 更に明るい声でにこやかに話しかけた。 「場所変えね?」 顔の筋肉は笑っている顔を作っているが、目は笑っていない。 今回、一番面倒をかけられている嵩だから効き目のある言葉である。 3人は同意し、教室を後にした。 嵩を先頭になんとなく気まずい空気のまま廊下を歩く。 購買へ何を思ったか嵩が立ち寄り、紙パックの飲み物を購入し、視聴覚室へ4人は入る。 「とりあえず、これでも飲んで落ち着こうや」 後ろ手に施錠した嵩は、めいめいイスだの机だのに腰をおろした3人に飲み物を配った。 「やっぱ、お前のセンスって最悪だろ…」 手に渡された『イチゴ・オレ』にうんざりした顔を隠さない鷹が文句を言う。 「おまっ!人にジュース貰っといて文句言うなっ!」 嵩にセンスの突っ込みはNGだったのかも知れないが、これを飲まされるくらいなら、先ほど自分で購入したほうがましだったと鷹は言う。
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