はじまりの章

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   母親は、いつも手探りで生活している。歩くときも壁を片手に置いきながらだから、物を一つしか運べない。時間も、分からないから、体で感じる温度差で動いている。外が、明るいのも暗いのも目は察知しない。耳もあまり良くない。でも、顔は、この国では見られないほど美人な顔付きだ。スタイルだって悪くないはずだと思う。だから、僕にとっては、自慢の母親でもある。 「行ってらっしゃい。気を付けてね」 「うん。行ってきます」 「今日、お父さんとなにかするの?」  僕は、一瞬戸惑った。なにか約束していたっけ?僕の頭の上に、ハテナマークが浮かぶ。母親は不思議そうに 「だって、今日お父さん仕事行くとき言ってたわよ」  きっと、イルミネーションのことだろう。まだ、クリスマスまでは、一週間切ったところで、一日が長いと、もっとクリスマスまで長く感じる。 「うん。そうだった」 「ルーズは、すぐ忘れるわね。おじいちゃんみたいよ」  間違っても、祖父までには、なっていないが反論する時間もないためそのまま走った。母親は記憶力がいい。  そして、僕は、学校に着いてから家に戻ることになる。
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