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僕の心臓が、止めどなく体中を痙攣させているが、足音は止まらない。ざくっ。また、ざくっと一歩一歩雪をかみしめるように近づいてくる。僕は、下を向いていたのだが、すぐそばにキャラメル色の細いブーツが見えた。
視線を移動させて、こんな寒い日に、スカートなんか履いていることが分かり、その下から覗かせる小さな拳ほどの、黒いタイツに包まれた膝小僧が見え隠れした。僕は、そのまま息を吸いながら背筋を伸ばして女の子を見た。
女の子は、白い毛糸の帽子をかぶっていて、金色の髪は、パーマをかけたように規則正しく巻かれていて毛先が、白いマフラーを通り越して肘の辺りまで伸びていた。つんっと澄ました鼻先は、ピンク色になっており、口元は、鼻先と同じくらいの色でふっくらとしていた。
「そう思わない?」
僕の顔に向かって女の子が言った。僕は、すぐには答えられなかった。彼女の目を見た瞬間、吸い込まれそうになった。右は、深いブルーで、左は、僕と同じ黒だった。オッドアイだと気づいたとき、ようやく吸っていた息を吐くことが出来た。
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