出会いの章

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   ポケットの食べかけのチョコレートを手で堅さを確かめながら、ゲートルと家路に向かっていた。ウキーマーは、午後の授業を受けるらしいが、ゲートルと僕は帰ることにした。ゲートルの家は、お菓子屋だから、クリスマスを待ちわびる賑やかな店が並ぶところを歩かなくてはならない。  夜が近くなるほど光は主張しあい、木は、すべて七色を出すクリスマスツリーとなっていた。 「じゃ。またな」 「うん。バイバイ」  僕は、ゲートルのお菓子屋には入ったことがない。飴玉やらクッキーやらガムやらが輝いて見える。ここのチョコレートは、バレンタインによく選ばれるのだが、僕にとっては買えないくらい高い。  赤と緑の靴下の中にお菓子が詰められていくのを見るのを止めて早足でお菓子屋から離れようとした。 「坊や、お帰り」  後ろからしゃがれた声がした。振り返ると祖父が立っていて、いつもは薄汚れた茶色の大きいコートなのだが、黒のしっかりとした体に合っているコートを着ていた。 「おじいちゃん」 「坊や、帰ろう」  祖父の手は冷たかったが、僕は構わず手を繋いで一緒に帰った。祖父は、その日の夜に亡くなった。
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