24人が本棚に入れています
本棚に追加
朝、起きると息が白く変わり、僕の周りを漂った。母親は、すでに台所に立っていて、祖父は、死んだように眠っていた。父親の姿はなく、僕は寒さで、二度寝することが出来ず、震えながら起きた。
「おはよう」
「おはよう。朝のスープ飲む?」
「うん。あれで、おじいちゃん生きてるの?」
「生きてるわ。吹雪の中でも、いびきをかきながら寝るもの」
スープの色を見て、昨日のシチューを薄めたかと思ったが、すすってみると、濃くて甘ったるのが舌に残った。ふいに、父親のことを思い出して
「父さんは?」
と震えた声で聞いてみた。母親は、僕に背中を向けながら
「仕事よ。霧と朝の賑わいを書いてくるんですって。お金になればいいけど」
と心配そうに言った。
「昨日は、絵売れたんだよね?」
「ええ。コインではなくて紙になったそうよ」
母親は、少し得意気に言いった。
「すごいじゃないか」
祖父が、いつの間にか椅子に座っていた。母親は、祖父の前にスープをそっと置いた。僕は、ゆっくりとスープを飲み干した。
「学校、遅刻しないの?」
「うん」
「なら、いいけど」
僕の母親は、目が見えない。
最初のコメントを投稿しよう!