はじまりの章

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   朝、起きると息が白く変わり、僕の周りを漂った。母親は、すでに台所に立っていて、祖父は、死んだように眠っていた。父親の姿はなく、僕は寒さで、二度寝することが出来ず、震えながら起きた。 「おはよう」 「おはよう。朝のスープ飲む?」 「うん。あれで、おじいちゃん生きてるの?」 「生きてるわ。吹雪の中でも、いびきをかきながら寝るもの」  スープの色を見て、昨日のシチューを薄めたかと思ったが、すすってみると、濃くて甘ったるのが舌に残った。ふいに、父親のことを思い出して 「父さんは?」  と震えた声で聞いてみた。母親は、僕に背中を向けながら 「仕事よ。霧と朝の賑わいを書いてくるんですって。お金になればいいけど」  と心配そうに言った。 「昨日は、絵売れたんだよね?」 「ええ。コインではなくて紙になったそうよ」  母親は、少し得意気に言いった。 「すごいじゃないか」  祖父が、いつの間にか椅子に座っていた。母親は、祖父の前にスープをそっと置いた。僕は、ゆっくりとスープを飲み干した。 「学校、遅刻しないの?」 「うん」 「なら、いいけど」  僕の母親は、目が見えない。
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