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予想外の質問に、佐伯は少し目を見開いた。が、小さく笑うと、
「秘密」
それだけ答えた。
そして、また沈黙。
佐伯は久世の傍に近付き、星の飾りを手にした。ツリーの一番上に付ける物だ。
「まだ教えられない」
ツリーに星を付けながら、佐伯はキッパリとそう言った。
「そう」
久世は無表情だ。佐伯は、それをちらりと横目で見た後、すぐに視線を戻して口を開いた。
「久世君。君は……。君は、本当は」
「なに?」
覗き込んだ久世の瞳と出会う。瞬間、佐伯は息を呑んだ。
彼の瞳が、あまりにも悲愴な影を帯びていたからだ。
何故、そう見えたかは、わからない。月が映す薄雲の影のせいだろうか、と思い直す。
「どうかしたの」
訝しげに眉を顰め、久世が尋ねた。
「……何でもない」
佐伯は、伏し目がちにそう答えた。
「体が冷えてきた。早く終わらせよう」
そう言うと、久世は急いで飾り付けを始めた。一方、佐伯は飾りを付けながら、無言で何かを考え込んでいた。
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