月下に、雪

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 学生寮『木梢館』は、真夜中ということもあり、静まり返っていた。    その夜、ふと目が覚めた久世玲(アキラ)は、水でも飲もうと階下に下りた。  辺りは真っ暗でひんやりとしている。久世は、羽織ったカーディガンをぐっと掴んで、身を縮めるようにしてキッチンへ急いだ。    その途中で、リビングが微かに明るくなっているのに気付いた。誰かが明かりを消し忘れたのだろうか。久世はリビングに近寄ると、そっと中を覗いてみた。   (あれは……)    開ききったカーテン。月明りの下、薄暗闇に浮かぶ人影。最初は誰なのか判別できなかった。  が、次第に目が慣れてくると、それが病弱な同級生、佐伯愁(シュウ)なのだということがわかった。    こんな夜中に、一体何をしているのだろう、と久世は訝しんだ。  しかし、いつまでもこうしている訳にいかず、彼はリビングの中に入ってみることにした。  
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