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中高大一貫の私立『梢瑶学園』には、中高のみに学生寮がある。
中等部は改築されて綺麗な寮だが、この高等部の寮『木梢館』は、木造で古く、ある意味で趣深い建物である。
その為か、遠方から来る生徒が多いにも関わらず、この寮を利用する者は少ない。
そんな中、病弱な佐伯がこの寮に入ったのは、一度親元を離れて生活したかったというのが理由らしい。寮に入る、という事を条件に、半ば無理矢理両親の了承を得たそうだ。
親には自分の人生を楽しんで欲しいのだと、いつだったか久世は、彼から聞いた事がある。
「手伝うよ」
そう言って、久世は、キラキラした丸い飾りを拾い上げた。
「え!? でも、悪いよ。明日学校あるし」
「そう言う君はどうなの。二人でやれば早く終わる」
言いながらも、早々と飾り付けを始めていた。それを見て、慌てて佐伯も飾りを拾う。
二人は、ただ無言で飾りつけを進めた。佐伯は、ちらりと横目で久世を盗み見た。
月明りに照らされた彼の頬は、どこか青白い。そして、角度によって冷たく光る瞳。
佐伯は、眩しそうに目を細めた。
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