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「……寒くない?」
突然、飾りつけをしながら、久世が尋ねてきた。
「あ。う、うん。平気。セーター着てるし」
慌てて、取り繕うように答える。
実際は、上にセーターを着ていても寒かったのだが、彼に心配をかけたくは無かった。
「そう」
小さく頷いて、久世は微かに微笑んだ。
(寂しい笑顔だ)
そう思い、佐伯は彼からそっと目を逸らした。
窓の外では、月が真っ白な庭を照らしている。この寒さでは、そのうち雪が降るかもしれない。
飾りつけの手を止め、久世は、ぼんやりと外を眺めた。それに気付いた佐伯も、同じように庭を眺める。
凛とした空気と冴えた月。真っ白な雪がキラキラと輝いて、美しい景色を形作っている。
「冬の夜って好きなんだ」
囁くように、久世は呟いた。
一体、どんな表情であの景色を見つめているのか。後ろにいる佐伯には、わからない。
しかし、予想はできた。
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