月下に、雪

5/12
前へ
/18ページ
次へ
「……寒くない?」  突然、飾りつけをしながら、久世が尋ねてきた。 「あ。う、うん。平気。セーター着てるし」  慌てて、取り繕うように答える。  実際は、上にセーターを着ていても寒かったのだが、彼に心配をかけたくは無かった。 「そう」  小さく頷いて、久世は微かに微笑んだ。 (寂しい笑顔だ)  そう思い、佐伯は彼からそっと目を逸らした。  窓の外では、月が真っ白な庭を照らしている。この寒さでは、そのうち雪が降るかもしれない。  飾りつけの手を止め、久世は、ぼんやりと外を眺めた。それに気付いた佐伯も、同じように庭を眺める。  凛とした空気と冴えた月。真っ白な雪がキラキラと輝いて、美しい景色を形作っている。 「冬の夜って好きなんだ」  囁くように、久世は呟いた。  一体、どんな表情であの景色を見つめているのか。後ろにいる佐伯には、わからない。  しかし、予想はできた。  
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加