月下に、雪

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(きっと、またあの寂しい顔だ)  そう思って、佐伯は足下の長靴の飾りを拾った。 「ねぇ、久世君」  佐伯に呼ばれて振り向くと、彼は悪戯っぽい笑顔で、飾りを小さく降って言った。 「サンタに何お願いする?」  突然の問いに目を丸くした。が、すぐに柔らかく笑って聞き返す。 「サンタ?」 「いないと思ってる?」 「いると思ってるの?」  佐伯は、久世の問いに笑顔で返した。そして、ゆっくりと窓辺に近付き空を見上げた。 「いたっていいんじゃないかなぁ。こう……。この空をさ、ソリに乗ってトナカイと渡るんだ」  楽しそうに言いながら、佐伯はその細い手で、宙に曲線を描いた。 「十六にもなって、って思うかな。でも、いないと思うより、いるかもって思った方が楽しいよね」 「そうだね」  小さく息を吐き、久世は微笑んだ。  
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