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電卓を見て納得した元奥さん。「では、よろしくお願いします。」
そう言うとガタイの良い兄ちゃんたちは次々に家具を運び出す。
「何をする!止めろ!」
何が何なのかわからなくなって混乱を隠せないジロウに、遂には一喝に力が入らなくなった。そして持って行かれた鏡を見たときに絶望した。自分の姿に影がない。その時自分があの影民になったことに気づいた。昔にも何度か新聞で見たことはある。しかしジロウは思っていた。そんなものになる人間がわからない。きっとこいつらは人間のクズなんだろう。
「…わたしが…あの影民に!?」
思い出したジロウも人間のクズになってしまった。泣きそうになった。そして家具の移動が終わって綺麗に床だけになって、奥さんと二人きりになったジロウ。そのときジロウは奥さんと目が合った。もちろん偶然である。
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