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「しかし…あの時の女性の笑顔は綺麗でした。こんなわたしにお礼をいうなんて。わたしは誰にも見えてないのに…気づかれてもいないのに。」
「あんた、影民だったのかい?」ジロウが頷くと、おじさんはタバコの煙と共に、身を任せるように語り出した。
「わしもなんですわ…昔はがんばっていたのですが…妻に浮気をされ、多額の借金を背負わされ、首を吊ろうとしたら台から落ちて気を失い、影民になっていた。うちの連中も、何か心に傷を負い影民になったんですわ。でもみ~んながんばって今を生きている。影民になって人についてわかったことがあるんですなぁ~。それ、気にせず食べてくだされ。」
ジロウは袋を開けた。中にはお茶といくつかの袋詰めされたおにぎりが入っていた。
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