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タダシは疑った。影民のことは聞いたことがあった。落ち着きを取り戻そうと自転車を止め、その場で再び考え込む。まさか自分があの影民になってしまうとは…。
そこに通行人がすれ違うところを見たタダシは、試しに背中を見せ合ったところで、ひとりの男性の背中を勢いよく持っていた鞄で叩きつけた。
大きくよろめき、倒れた瞬間に「てめぇ!なにしやがる!」
と大声を張りながらすれ違ったもうひとりの男性へ近寄り胸ぐらを掴む。
「なんだよ!なにすんだよ!」
「こけさせといてふざけやがって!」
言い合いから殴り合いに変わった。そのすべてを見たタダシは、二人はタダシのことを見ていない。いや、気づいていない。本当に影民になっていることを改めて知ったタダシは驚きのあまりに体から力が抜け、その場に座り込んでしまった。
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