救いの手

12/16
前へ
/66ページ
次へ
「あのね、家っていっても普通の家じゃないんだ」  少女はラレルを落ち着かせて言った。 「『あおぞら』っていうフリースクールに住んでるの。個人の家じゃないから気にしなくて良いよ」 「あう、マジですかー」 「マジです」  なんとラレルの妄想通りだった。こんなことがあるものなのか。  少女に案内されるままについていくと、オレンジ色の屋根の建物についた。 「ここが、あおぞらか。なんだか幼稚園みたいな建物だな。」 「上がって上がって」  ラレルは引きこもり気味の少年だったので、知らない場所は苦手だった。小さいころは初めての店や床屋に行く度に泣いていた。  今でも見知らぬ場所へいくとびくびくする。しかしこの建物フリースクール「あおぞら」に入って見ると、なんだかとても落ち着いた。  薄い肌色の床と白い壁を見ると病院のような雰囲気だった。明かりが行き届いていないせいか、薄暗く見える所もあり、あまりアットホームな場所とはいえない。 「だけど、なんだか山の中にいるみたいに感じるんだ」 「なにそれぇ。汚く見えるってこと?」  少女は笑いながら救急箱を持ってきた。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

318人が本棚に入れています
本棚に追加