318人が本棚に入れています
本棚に追加
再び沈黙が続いた。ラレルは何を話そうか迷い、殊音もその様子だった。しばらくすると、
「ただいまー!」
元気な声が玄関から響いてきた。それは子供ではなく、大人の女の声だった。
「ん? 帰ってきたかな」
殊音は玄関の方をちらっと向いたが、彼女を出迎えるようなことはせず、そのまま座っている。
「殊音ー! お、その子はもしかしたら!」
声の主が扉から現れた。ボブヘアの女性だ。胸が大きい。この人がこのフリースクールの指導者だろう、と思いラレルは挨拶しようとした。しかしタイミングが掴めない。
「もしかしたらって何? ただ怪我してるから連れてきただけだよ」
その女性は少し口を曲げた。
「そうなの。実は今日新しい子が来るって聞いてたんだけど」
「それ、僕です」
ラレルはようやく、二人に事情を話した。この女性の素性も聞いた。名前は「一津木鳴」と言い、「あおぞら」のスタッフの一人なのだが、他のスタッフが非常勤な上、経営者もなかなか姿を現さないので実質的な管理者、ということらしい。
「ラレルもここにくるつもりだったんだ! 私と会ったなんて偶然だねー」
最初のコメントを投稿しよう!