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しばらくすると神父は両手で持つほどの大きい器になみなみとそそがれた水をちゃぷちゃぷとこぼしながら足早に帰ってきた。
「神父様!
それは聖水ではないですか?」
ジャンヌはびっくりして神父に近寄った。
「いやいや、神からの贈り物であるかもしれない物にこれくらいは使わないと失礼があってはなりませんから。」
息を切らせながら神父はそれに聖水をかけ流した。
不思議なことに聖水をかけただけで自然に土がはがれおち、本来の輝きを取り戻しはじめた。
それは黒い鉄の鞘におさめら柄に金細工がほどこしている日本刀だった。
が、当時日本刀を見た欧州人はほぼ居ないと言っていい。
「これは…剣ですか?」
ジャンはまた同じ事を誰ともなくたずねた。
ジャンヌは無言でうなずき答える。
「さきほどのお告げは
"教会の裏に剣が埋まっている"
とだけありました。
こちらから質問しても今回は何も答えてはくれませんでした…」
ジャンヌは太刀を横にしたまま柄に手をかけた。
「抜いてもよろしいのですか?」
ベルトランは何かの不安がよぎったようだ。
「神からのお告げより戴いたものです。
大丈夫だと思いますが」
ジャンヌは柄を持つ手に力を入れた。
キチッという音とともに鞘から刀身があらわれた。
瞬間、
刃に太陽があたり一面に光が乱反射した。
その場にいた者は全員その光に目がくらみ一瞬我を忘れてしまった。
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