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「検査の結果から先に申し上げます。胃癌です。残念ながら進行が早いタイプです。とにかく、すぐにでも摘出しましょう。」
涼子の目の前は真っ暗になった。体が震えだした。涙は出なかった。
「だんな様には告知しますか?それとも重症の胃潰瘍だとしておきますか?」
「完治するのでしょうか?」
「定期的な検査が必要です。転移がなければ大丈夫ですよ。」
「そうですか・・・。」
長い沈黙を破り涼子は口を開いた。
「胃潰瘍にしてください。子供が生まれますし、動揺させたくはありません。どうかよろしくお願いします。治して下さい。」
「最善を尽くします。」
涼子が病室に戻ると恭一は笑顔で迎えた。
「ごめんな。言うこときいて、もっと早く診てもらっていればよかったな。まさか血を吐くなんて、そこまでいくなんて思わなかった。先生はなんて?胃潰瘍なのか?」
不安そうに涼子を見つめた。
涼子は目を見ずに言った。
「ゆっくり治しましょうよ。働き過ぎたのよ。やっぱり胃潰瘍で手術ですって。痛む?」
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